2007BEST :


Susumu Yokota / LOVE or DIE

雑誌のインタビュー記事で、横田さんはこんな事を言っていた。
“このアルバムが出来た瞬間、もう音楽活動を止めてもいいと思った”

デビューから15年を迎え、オリジナル・アルバムとしては実に28枚目となる本作。万華鏡を覗かせてくれるかのように、リリースの度に作風を軽々と変えていく横田さんの作るアルバムは、どれもがアイデアとセンスに満ちていて、僕らを驚かせ楽しませてくれるものであったが、その作品群の中にあっても、本作は特別な一枚になるであろう。

Love or DieLove or Die
SUSUMU YOKOTA


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昨年の『Wonder Woltz』から始まった“3拍子”の追求。続く『Triple Time Dance』ではリズムを徹底的に鍛え上げ、フロア向けのダンス・ミュージックとして昇華させた。今作も引き続き3拍子のメソッドにより制作されたものである。ただし、3拍子であることが大きなテーマとなっていた前2作とは意味合いが少し異なり、ここでの3拍子は、音像を形成するひとつの要素にすぎない。すなわち、テクノ、ハウス、ブレイクビーツ、ドラムンベース、アンビエント、エレクトロニカ、、、今まで横田さんが見せてくれた音の断片が、この作品には全て入っている。

全体を通してのアンビエントで壮厳な印象は、傑作『Symbol』を彷彿とさせる。そして『Sound of Sky』のようなエレガントなハウスのビート。あるいはブレイクビーツやドラムンベースの要素。ロスコとの競演盤で見せた、もの哀しく泣くようなギターを垣間見ることも出来る。...こう書くとずいぶん雑多な印象だと思われるかもしれないが、そこが横田さんのすごいところ。いかにも詰め込みました的な安っぽさを感じさせない。センスというか編集力というか。ごく自然に、そこに“在る”という感覚。

そう、まさにそれこそが。僕が、横田さんに心酔する理由はそこにあるのだと思う。どんなに作風が変わっても、頑張りすぎた感じがなく、変幻自在にサラリとやってのける。つまりスタイルが自分のものになっている。

その編集センスは“引きの美学”とでも言ったらいいだろうか。それは、ほとんどを自身で手がけているジャケットのデザインにも如実に表れている。オモテのアートワーク(ちなみに今回のアートワークは自身による1987年ー音楽デビュー以前の作品だ)、中面を開くと曲名と数行のクレジット。それ以外はなにも無し。裏面にいたっては真っ白である。これは、なかなか出来ない(手抜きだと思われるのがこわいからね)。

行間に込められた感情の機微を読みとったり、何も無い空間から風を感じたりするように、日本人はその繊細な感覚で[間]を大切にしてきた。この、[間]の美意識は、世界に誇れるものだと思う。横田さんの作品からは、そういった美意識(禅の世界観にも通じるかもしれない)が感じられるのだ。常に、ピンと糸が張った如く適度な緊張感があり、聴く側も意識が高揚し集中力が高まるのである。かように真の意味で国際的なクリエイターが、日本国内よりも海外での評価のほうが高いというのはちょっと悲しいが。

それからもうひとつ。本作を語る上で、これがもっとも特筆すべきことかもしれない。
それは、美しい旋律を奏でるメロディ。優雅で耽美、そして非常に叙情的。全曲インストであるが、かつてないほどに“うた”を感じさせるアルバムになっている。いつになく長く、寓話的な曲名と相まって、聴く者に物語性を感じさせる。(インタビューの中で、最近のお気に入りのひとつにシネマティック・オーケストラを挙げていた点も興味深い。彼らの新作もまた“うた”を感じ、物語性を感じさせるものであった。)

『Love or Die』。
“愛するか死ぬか”という意味深なタイトルは、「Recycle or Die(リサイクルするか死ぬか)」という言葉から来ているらしい。その意味するところは、この作品を聴いた各自の判断に委ねられるだろう。前述した“ジャケットの潔さ”が説得力を持つのは、何よりも音楽がすべてを物語っているから。余計な説明や装飾は必要がない。こんな長ったらしいレビューさえ必要ないかもしれない。横田さんからそっと差し伸べられたこの豊穣な音楽に触れ、各々が各々の物語を楽しめば良いのである。耳を傾ければ、きっとその世界を深く味わうことができるはずだから。

関連:試聴(CISCO RECORDS)
   ススムヨコタ公式サイト
ブログ内リンク:ススムヨコタ特集

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投稿者 山やま : August 09, 2007 | コメント (5) | トラックバック (8) | ▲page top

佐野元春 / COYOTE

音楽で胸がときめくこと。
音楽で胸がいっぱいになり、涙すること。
音楽で笑顔と共に希望を感じること。

この感動を忘れていた。


だいぶん更新の間隔が空いてしまいました。更新する暇が無かったということもありますが、それよりも“書けなかった”といったほうが正しいでしょう。音楽を聴いていなかったわけではありません。しかし何を聴いても、こう、しっくりとしない感じが続き、それは何故なのかはわからないのですが、自分でも何を聴きたいのかよくわからず、只なんとなく漫然と音が流れているだけの聴き方が続いておったのです。そんなんですから記事など書けるわけもなく、停滞していたわたしの音楽生活の殻をつき破り、それどころかここ何年か味わった事のない程の感動を与えてくれたのが、佐野元春のニューアルバム『COYOTE』だったのです。ロックンロールに胸を焦がすなんて、実に何年ぶりだろうか。ロックを聴かなくなってしまって久しいが、まさか同時代のロックを聴いてまたこんな体験が出来るとは思っていなかった。ロックンロールに夢中だった頃の、甘酸っぱい気持ちが甦る。

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佐野元春


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関連:試聴(公式サイト)
   アルバム”COYOTE”について / 佐野元春
   佐野元春インタビュー(musicshelf)
   R25インタビュー(R25.jp)
   賢者と少年-『Coyote』を巡って / 片寄明人

投稿者 山やま : June 25, 2007 | コメント (2) | トラックバック (410) | ▲page top

HIROSHI WATANABE / GENESIS

あの。素晴らしいです。
ワタナベヒロシさんは、日本が世界に誇るアーティストとして、ススムヨコタやケンイシイらと比肩する存在といっていいのではないでしょうか。確実に、この人ならではの音色というものが出来あがっています。Kaito名義の作品でも、TREAD名義の作品でも、そしてHIROSHI WATANABE名義での初の作品となる本作でも。

GENESISGENESIS
HIROSHI WATANABE


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ギリシャのレーベルKlikからのリリースとなる本作は、今までよりもダンスフロアを意識したつくりで力強く、生命力と躍動感に満ち満ちています。そして彼の真骨頂である透明感と泣きたくなるほど美しいメロディラインが踊りまくり。キラーチューンというかキラーフレーズが惜しげも無くベタなまでに投下されるビッグボムにわたくしはノックダウン、瀕死。
関連:試聴(KLIK RECORDS)試聴(CISCO RECORDS)
   ワタナベヒロシさんのブログ
   『Genesis』発売記念インタビュー(HMV)
ブログ内リンク:
   Kaito / Hundred Million Light Years
   kaito / special life
   Hiroshi Watanabe / Beatmania 〜Beat indication

投稿者 山やま : February 06, 2007 | コメント (15) | トラックバック (3) | ▲page top

4 hero / Play with the changes

これこそ、2007年型フュ−ジョン・ソウル。

ウェスト・ロンドンから音楽の未来を模索し続ける、DegoとMark Macによるユニット 4hero。名作『Two Pages』の大ヒットにより、多くの人にとっては“ドラムンベース”アーティストのイメージが未だに強いかもしれない。しかし、デトロイト勢とも共振する彼らの音楽の中心にあるのは“ソウル・ミュージック”なのだと再認識しなければなるまい。続く『Creating Patterns』はドラムンベースに偏ることなく音楽性の幅を大きく広げたアルバムであった。さらにDegoは2000Black、DKD、シルエット・ブラウンといったユニットでブロークンビーツの行くべき道を追求し続け、Marc MacはVisioneers名義にて生楽器とサンプリングを絶妙にブレンドしたオーガニックでジャジーなヒップホップでその類い稀な手腕を発揮している。各々の活動が充実していたため『Creating Patterns』から6年ぶりとはいっても久しぶり感はあまりない。むしろ二人のソロでの活動の成果がよくわかる、期待を裏切らない納得のアルバムになっている。

プレイ・ウィズ・ザ・チェンジズプレイ・ウィズ・ザ・チェンジズ
4ヒーロー


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特に印象的な曲は冒頭を飾る「Morning Child」。壮大なストリングスはまさに4hero節。はじめて聴いたのにはじめて聴いた感じがしない、とは妻の談。女性ボーカルを多くフュ−チュアし「うた」に重きを置くサウンドは、ここ数年におけるブロークンビーツの目指す道の集大成であるかのような。すなわち21世紀型のフュ−チャー・ソウルは、この作品でひとつの完成型を迎えたといっていいのではないでしょうか。細部まで行き届いた完成度の高さはまさに“円熟”というに相応しい出来です。

逆に言えば、新鮮味には欠ける事もまた事実。この作品をひとつの頂として、ブロークンビーツのひとつの流れは終焉を迎え、また新たな地平を目指していくのではないかと。だって、そうでなければマンネリしちゃいそうな。時代の先端を行く人の宿命ですよね。“4heroの集大成”とも言うべき本作を聴いて、そんな余計な心配までしてしまうのでした。

関連:試聴(オフィシャル・サイト)
   『Play With The Changes』発売記念インタビュー(HMV)
ブログ内リンク:
   4 hero / Two Pages
   4 Hero / Creating Patterns
   2000BLACK Presents / THE GOOD GOOD
   DKD / Future Rage
   Visioneers / Dirty Old Hip Hop
   marc mac のpodcast
   これも好きかも→ OST / Legends of Underground
   これも好きかも→ JAZZANOVA / The Remixes 2002-2005


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投稿者 山やま : January 21, 2007 | コメント (0) | トラックバック (2) | ▲page top
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