雑誌のインタビュー記事で、横田さんはこんな事を言っていた。
“このアルバムが出来た瞬間、もう音楽活動を止めてもいいと思った”
デビューから15年を迎え、オリジナル・アルバムとしては実に28枚目となる本作。万華鏡を覗かせてくれるかのように、リリースの度に作風を軽々と変えていく横田さんの作るアルバムは、どれもがアイデアとセンスに満ちていて、僕らを驚かせ楽しませてくれるものであったが、その作品群の中にあっても、本作は特別な一枚になるであろう。
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昨年の『Wonder Woltz』から始まった“3拍子”の追求。続く『Triple Time Dance』ではリズムを徹底的に鍛え上げ、フロア向けのダンス・ミュージックとして昇華させた。今作も引き続き3拍子のメソッドにより制作されたものである。ただし、3拍子であることが大きなテーマとなっていた前2作とは意味合いが少し異なり、ここでの3拍子は、音像を形成するひとつの要素にすぎない。すなわち、テクノ、ハウス、ブレイクビーツ、ドラムンベース、アンビエント、エレクトロニカ、、、今まで横田さんが見せてくれた音の断片が、この作品には全て入っている。
全体を通してのアンビエントで壮厳な印象は、傑作『Symbol』を彷彿とさせる。そして『Sound of Sky』のようなエレガントなハウスのビート。あるいはブレイクビーツやドラムンベースの要素。ロスコとの競演盤で見せた、もの哀しく泣くようなギターを垣間見ることも出来る。...こう書くとずいぶん雑多な印象だと思われるかもしれないが、そこが横田さんのすごいところ。いかにも詰め込みました的な安っぽさを感じさせない。センスというか編集力というか。ごく自然に、そこに“在る”という感覚。
そう、まさにそれこそが。僕が、横田さんに心酔する理由はそこにあるのだと思う。どんなに作風が変わっても、頑張りすぎた感じがなく、変幻自在にサラリとやってのける。つまりスタイルが自分のものになっている。
その編集センスは“引きの美学”とでも言ったらいいだろうか。それは、ほとんどを自身で手がけているジャケットのデザインにも如実に表れている。オモテのアートワーク(ちなみに今回のアートワークは自身による1987年ー音楽デビュー以前の作品だ)、中面を開くと曲名と数行のクレジット。それ以外はなにも無し。裏面にいたっては真っ白である。これは、なかなか出来ない(手抜きだと思われるのがこわいからね)。
行間に込められた感情の機微を読みとったり、何も無い空間から風を感じたりするように、日本人はその繊細な感覚で[間]を大切にしてきた。この、[間]の美意識は、世界に誇れるものだと思う。横田さんの作品からは、そういった美意識(禅の世界観にも通じるかもしれない)が感じられるのだ。常に、ピンと糸が張った如く適度な緊張感があり、聴く側も意識が高揚し集中力が高まるのである。かように真の意味で国際的なクリエイターが、日本国内よりも海外での評価のほうが高いというのはちょっと悲しいが。
それからもうひとつ。本作を語る上で、これがもっとも特筆すべきことかもしれない。
それは、美しい旋律を奏でるメロディ。優雅で耽美、そして非常に叙情的。全曲インストであるが、かつてないほどに“うた”を感じさせるアルバムになっている。いつになく長く、寓話的な曲名と相まって、聴く者に物語性を感じさせる。(インタビューの中で、最近のお気に入りのひとつにシネマティック・オーケストラを挙げていた点も興味深い。彼らの新作もまた“うた”を感じ、物語性を感じさせるものであった。)
『Love or Die』。
“愛するか死ぬか”という意味深なタイトルは、「Recycle or Die(リサイクルするか死ぬか)」という言葉から来ているらしい。その意味するところは、この作品を聴いた各自の判断に委ねられるだろう。前述した“ジャケットの潔さ”が説得力を持つのは、何よりも音楽がすべてを物語っているから。余計な説明や装飾は必要がない。こんな長ったらしいレビューさえ必要ないかもしれない。横田さんからそっと差し伸べられたこの豊穣な音楽に触れ、各々が各々の物語を楽しめば良いのである。耳を傾ければ、きっとその世界を深く味わうことができるはずだから。
関連:試聴(CISCO RECORDS)
ススムヨコタ公式サイト
ブログ内リンク:ススムヨコタ特集
[TrackList]
01. For the Other Self Who Is Far Away That I Can Not Reach
(私の手の届かない遠くに居るもう一人の私のために)
02. A Slowly Fainting Memory of Love and Respect And Hatred
(ゆっくりと薄れゆく敬愛と憎しみの記憶)
03. The Loneliness of Anarchic Beauty Achieved By My Ego
(自分のエゴを貫いたアナーキーな美学による孤独)
04. A Heart-warming and Beautiful Flower Will Eventually Wither Away and Become Dirt
(心ひかれる美しい花もいつかは散り土となる)
05. The Sin of Almighty God, Respected and Believed by the Masses
(万人が信じて尊敬される偉大なる神の罪悪)
06. That Persons Hearsay Protects My Free Spirit
(あの人の風のたよりが私のフリースピリットを守ってくれる)
07. The Things That I Need To Do For Just One's Love
(たったひとつの愛のために私がやらなければならないこと)
08. The Scream of a Sage Who Lost Freedom and Love Taken For Granted Before
(今まであたりまえだった自由と愛を失った賢者の叫び)
09. A Song Produced While Floating Alone on Christmas Day
(これはクリスマスの日に一人で浮遊しながら作った曲)
10. The Now Forgotten Gods of Rocky Mountain Residing In The Back of The North Woods
(今は忘れられてしまった北の森の奥にある岩山の神々)
11. The Sacred Ceremony Concieved by Chance From an Evil Lie
(邪悪な嘘から偶然に生まれた聖なる儀式)
12. The Destiny fo the Little Bird Trapped Inside a Small Cage For Life
(小さな篭の中に一生閉じ込められた小鳥のさだめ)
横田さんはアートワークも心惹きつけられるものが多いですよね。
しかも自分で作成してる所に、総合的なアーティスト性を感じます。
今回のは1987年作成のだけど、全然古臭さが無いしむしろこの抽象的な雰囲気が音にぴったりです。
いつもアルバムをひっそりリスナーに提供する謙虚な姿勢。
驚きと妥協のない質。ほんとにこの人は貴重。。。
新作すばらしいですね。
そうですね、ぜんぜん古臭くなくて
幻想的な今作にぴったりですよね。
マルチな才能に恐れ入ります。
で、これだけのクオリティを保ちながら
ホントもったいないくらいにひっそりとしてますね・・・
「仙人」ですね。
薑箙篏 ≪若 腴ヨ 蕭ャ≪ゃ 祉 ゃ 罸 鴻 腴ヨ 演 筝 蕁絨 ゃ
辣粮韲竏 諷褞韲迯 驤窶鞳鴿 - 逑鞐 碆粨 闊碆 驤窶鞳鴿
Posted by: Parltanny : December 14, 2010 05:59 AM日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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