04年の第17回山本周五郎賞、第131回直木賞をダブル受賞した本作。秋田の阿仁マタギとして生まれ育った主人公の、波瀾万丈の生涯を描く壮大な大河ドラマ。直線的で硬派な文体が、山に生きるストイックな男たちを魅力的に映す。主人公をはじめ、それに関わる人たちの辿る人生がどれも凄まじい。500ページを超える大作にもかかわらず、引き込まれ1日で読んでしまった。大正〜昭和初期まで、日本にはこのような世界があったのかと、現代に住む自分にとってはまるで別世界の事のように感じる。
マタギは山の神を信じ、自然の掟を乱すような事はしない。山に対する畏敬の念が厳然と存在する。それは例えばメディアから得た知識を自分の血肉だと勘違いしているような中途半端なエコ意識とはかけ離れたものだ。山と生死をともにする者だけが知る事の出来る、生きた感覚であったはずだ。
訳あってマタギの世界から去るはめになった主人公は、様々な困難や誘惑に戸惑い苦しむが、根底にあるのは毅然とした態度。それはやはり人智を超えた大いなるものを信じるマタギの世界の中で培われたものではないだろうか。
そう、日本にはこのような世界があったのだ。このように精神性を尊ぶ世界が。文化とか知性とか生活水準では現代とは比べようもないし戻る必要もないが、生きる指針すらままならない私たちにとって学ぶべき事は多いはずだ。
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