July 07, 2004
July 07, 2004
原因と結果の法則 / ジェームス・アレン
んー、この「いかにも」なタイトルはちょっとどうなの?と思ってしばらくは眺めてたんだけど、やっぱり気になったので読んでみた。
「ナポレオン・ヒル、デール・カーネギー、オグ・マンディーノなど、現代成功哲学の祖たちがもっとも影響を受けた伝説のバイブル。聖書に次いで一世紀以上もの間多くの人々に読まれつづけている驚異的なベストセラー、初の完訳。」__amazonより
なんかこう、ずっと引っ掛かってることがあって。 宗教とか、エネルギーとか、波動とか、霊とか、いろんな解釈があって、それぞれが違う言葉を使って表現しているから、どれとどれが同じなんだかわからないというか。もう、すっきりと理解したい!という気持ちがずっとあって。必要以上に感情的に捉えるのもどうかと思うし、かといって科学だけでもないし。
結局は自分の意識の持ちようで、発信しているのは常に自分なんじゃないかと思い始めていたので、この本を読んで少しだけすっきりしたような気がした。
「原因」と「結果」の法則。このことはダライ・ラマ法王の講演会でも聞いたような記憶があるんだけど、物事にはすべて原因があると。そして、全ての出来事は自分の想いの結果 なんだと。だから、物事自体は「空」。「色即是空」も同じ事かね。
だから、例えば現実に起こる嫌な出来事やなんかも、自分が発していた何かしらの想いに対する反応が具現化したものなんだということ。そこにはどんな情けもなくて、ネガティブに物事を捉えている人にはネガティブな現実しか起こらない。人を憎めば憎まれて、人を許せば許される。もちろん、時には自分には非はない、と思うような出来事も起きるけれど、それすらも、自分が引き寄せているということらしい。
現実を変えたいと願うなら、自分の内の想いを変えることだと書いてある。どんなことが起こっても、人のせいではないんだということ。全部自分が引き寄せたこと。まずそれを認めることが大切なんだろうね。
自分以上にも、自分以下にもならないということだ。自分を取り巻いている環境は、自分が創り出しているんだから。 そういう意味では、おそろしい程に人は平等なのかもね。
目指すべきは、健全なココロと、そこから生まれる健全なカラダ。
July 07, 2004
るきさん / 高野文子
るきさ〜〜ん。
私、これが一番好きなマンガかもしれない。
初めてこのマンガを知ったのは8年も前のことで、当時働いていた雑貨屋の先輩が教えてくれたのでした。今思えば当時の先輩は今の私と同じ歳なので、なんかこのマンガが好きだったっていうことに妙に納得。
当時自分でも手に入れて、すごく面白くて持ち歩いていて電車の中とかで読んでいたんだけど、しょっちゅう遊びに行っていた友達の家に置いてきちゃったんだよね。でもその家はいろんな人が出入りしていたので、きっと誰かが読むだろうし、みんなに読んでもらいたいような気もして、あえて回収しなかったの。
で、最近になってやけにまた読みたくなって、でも80年代にHanakoに連載されていたこのマンガが果 たして売ってるのか?と思ったら、あっさりアマゾンで発見。迷わず買った。
作者の高野文子さんは他にも何冊か出してるけど、私はこれが一番すき。 なんていうか、すごく憧れるんです。るきさんに。マイペースで、でも自立してて、人との距離をうまく保っていて、とにかく気持ちいい。 友達のえっちゃんとのコンビがまた最高で、ほんとにうらやましくなっちゃうの。えっちゃんは、もたいまさこさんにソックリ。「やっぱり猫がすき」に通 じるような部分もあるのかな。あれも大好きだったな〜。
とにかく最近「生活」が気になって仕方ないんです。 自分のペースをしっかりもって、誰にも迷惑かけず、干渉もされず、でも人にやさしく、楽しく生きている人たちが素晴らしくって。
↓この下の吉本ばななの本にも出てきたニュアンスなんだけど、 「自分の場所を決めて、その場所で淡々と生きるということが、視野を狭めることだと思ったら大間違いだ、ということ。」が気になるんです。 ちょっと脱線したかもしれないけど。おススメです。
July 07, 2004
デッドエンドの思い出 / 吉本ばなな
久しぶりに、吉本ばななの小説を読みました。 そしてやっぱり、私はこの人の小説すきだなぁと思った。 短編集なのですが、それぞれに漂う空気感は繋がっていて、そこには誰しもが心の中に持っている「エアポケット」のようなものがあった。時々ふっと、視界から余計なものが全て取り払われて、物事の輪郭がすっきりと見える瞬間が来たような、あの感じ。 あの場所にずっと居られるならば、どんなにかいいと思う。しなやかな確信があって、大切なものがしっかりと見えていて、全てが調和しているところ。 そんな場所で生きている人たちの、正しさ、とでもいうのか。
・・・・・・・・・
「川」について書かれた一遍があって、「川」を突き詰めると、それは「時の流れだ」という。ゆったりと、時にはあっという間に、途絶えることなく流れていく。決して、待ってはくれないのだ。 でも、流れていない川を眺めても、心は動かない。それは川ではないから。 私はずっと、川のそばで暮らしている。生まれた場所もそうだし、そのあとも、そして今も。今思うと、気分が行き詰まった時は、いつも自転車にのって多摩川に行き、何をするでもなくずっと川を眺めていたりした。今も、心が落ち着かない時は、馬見ヶ崎川に行く。 そこに、エアポケットへの入口があるから。 川のある街を、ずっと好きだと思う。
http://www.yoshimotobanana.com/
July 07, 2004
まいにち つかう もの / 伊藤まさこ
読書とは別で、私は好きな写真集やら雑誌やらを繰り返して何度も何度も見るんだけど、(疲れてる時には有効なんだよね)昨日もそんな本を眺めておりました。 雑貨スタイリストの伊藤まさこさん著「まいにち つかう もの」という雑貨の本。 ごはんが美味しく炊ける土鍋とか(最近気になる)、150年前のすす竹を使って作られる竹のお箸とか、モロッコ製の皮のスリッパとか(これは買っちゃったー)、カシミアのひざ掛けとか、とにかくじっくり長く使えそうな「いいもの」がたくさん。 もちろん安いものではないんだけど、手が届かないほど高いわけでもなくて、むしろ長年大事に使うことを考えたら、まにあわせで今イチ気にいらないものをなんとなく使い続けるよりよっぽどいい。(この「間に合わせ」については、糸井重里のページにも書いてあったなぁ)
自分にとってのそういう「もの」を見つけた時って本当に嬉しいし、大切にしたいと思う。 例えば私の場合、かれこれ15年同じものを買い続けているサベックスのリップクリーム、とか、飴色になるのが楽しみなフランス製の柳のカゴとか(買った当時の私には高かった!)、これまたあまりにも定番だけどデュラレックスのピカデリーとか。(10年使ってもまだ全然丈夫)
そういうの、少しずつ増やして行きたいなあ、と。
だから、いろんなスタイリストさんが出版しているこのテの本は大好きで、人それぞれの思い入れを知るのが楽しい。小澤典代さんの本とか。 前田まゆみさんの、リネンに対する想いとか。
オリジナリティがあればあるほど憧れてしまう。
でも、たくさんの人に愛される「いいもの」ももちろん魅力的なんだけど。 だってルクルーゼの鍋とか絶対もっと欲しいもん。 (パンプキンの形のやつ欲しい!) 柳宗理のミルクパンも、Henryの掃除機も。
と、考えるだけで幸せ...。 そうやって、生活に関わる「もの」が、積み重なっていく感じに、憧れるのですよ。
July 07, 2004
藤田理麻の小さな黒い箱 / 藤田理麻
心理学の世界には「Black little box」という言葉があって、人間は誰でも心の中に小さな黒い箱を持っていると言われているんだそう。小さい頃に傷ついたこととか、苦しかったこと、そういう人には言えない想いを、誰もがこの箱にしまいこんでいると。 そして本当に心を解放するためには、このBlack little boxの中にしまい込んだ想いと向き合う時が必ずやってくる。
きっと誰の心にもこの箱はあって、でもこの箱を開くのはみんな怖いんだろうね。痛いからね。でも、ということはみんな同じように独りで苦しんでいるんじゃないか、ということに気がつく。自分を解放できるのは自分でしかないということ。
この本の作者は、以前「ワーズワースの庭」というTV番組(大好きだったー)の挿し絵を描いていた方で、現在はNY在住。ある日夢のなかで「チベットのために何かをしなさい」という声を聞いて、その後、風化しそうになっていたチベットの民話を集めて絵本を作り、インドでくらすチベットの子供達にそれを贈ったそうです。 その後もチベットの解放のために、いろいろと尽力されているようです。
本人は特に宗教を持っているわけではないそうですが、宇宙の偉大さ、そこにある大きな存在について非常に真摯に向き合っているように見えます。自分の内と向き合うのは自分でしかない、という姿勢に、私も共感します。
とても大切なこと、忘れたくないことでも、日常に埋もれて忘れてしまうことってあると思うんだけど、この本は彼女にとって、そういう「常に心に留めておきたいこと」をまとめたものなのだそう。
心にしみる、でも姿勢を正したくなるような言葉がたくさんちりばめられた本です。
10年来の親友が、私の誕生日に贈ってくれた本です。
July 07, 2004
遠い国 / 小林紀晴
70年以上も前に同じ様に旅をしていた、金子光晴の本を辿るようにして、世界各地のインドコミュニティーを巡り歩いた旅の記録。同じ場所に立って、そこに何かが焼き付いて残されてはいないか、と願うような気持ちが伝わってくる。
人が、「越境するということ、交わるということ、そして逆に交わらないということについて」 思いを馳せている。彼が思う「遠い国」が、インドなのか、日本なのかはわからないけれど、常に越境していたい著者にとっては、「遠い国」こそが、求め続ける場所なのかなと思った。
July 07, 2004
ずっとずっと空の彼方までも行っている気分なのです。―ダンジネスの浜、 デレク・ジャーマンの庭― / 小渕もも
これは、イラスト&散文集。私はデレクジャーマンが最期の時間を過ごした彼の家と庭にとても惹かれていて、いつか見てみたいと思っているんだけど、この本を描いた小渕ももさんは、あるきっかけでその場所に行き、その庭に大変なインスピレーションを感じてその場で数十点のイラストと文(作品)を描いてしまったのだそう。そしてその作品を知人に送ったら、その人がぜひ本にしましょう!と提案して、この本が出来上がったのだそうです。
余計な事が全てそぎ落とされたようなストイックなその庭は、でもとても美しいのです。エイズで逝った彼が、自分の最期を過ごす場所と決めた、イギリス、ダンジネスの浜。近くには原発があって、誰も住まないその場所。
小渕さんのイラストを見ていると、何か、納得してしまう。 孤独だっただろうけど、死が怖かったかもしれないけど、それは多分とても濃い「生」を感じる日々だったんだろうと。 その中には澄んだ幸せのようなものがあったのであろうと。
いつか、行ってみたい。
その庭を見てみたい 。
July 07, 2004
思うとおりに歩めばいいのよ / ターシャ・テューダー
絵本作家として有名な、ターシャ・テューダーの本。 なんとなく書店で手にしたんだけど、今の私の気分にしっくりきます。最近、「アレクセイと泉」という映画を見たのですが、それと通 じる真実が書かれているような気がする。
毎日の日常を、丁寧に暮らすということ。 自分で作れるものを自分でつくり、自然に逆らわずに季節を楽しみながら生きること。与えられているものに感謝の気持ちを持ち、そしてそれを受け取ること。
美しいものは自然の中に充分にちりばめられているんだと思う。 五感を研ぎすまして暮らすことは、きっと喜びに満ちてるんだろうね。
リスペクト。
美しい花に、清らかな水に、鮮やかな緑に、生きている自分に 。
July 07, 2004
ボロボロになった人へ / リリーフランキー
えーとまだ読み始め。 リリーフランキーの今までの本とは随分と違うので、これはかなり本気だなーと思い、手に取りました。この人の言うことは、数年前までは、なんかヤな感じ!と思っていたんだけど、それって私にとって耳の痛い言葉が並んでいただけのことで、かなり人間観察の鋭い人だと思う。女っていう生き物をすごーく理解してる感じで。都会の渾沌とした感じとか、人間のグロい(感情的に)ところとかをひっくるめて直視してるのはすごいというか、なんというか。針の振り切れた世界を知っているっていうかね。でも自分の立ち位 置は変えないよ、っていうね。
でもとにかく、リリーフランキーで、このタイトル。 いいこと書いてありそな予感。
***
読み終えました。やー、いい本だと思います。 短編集ですが、最後から2番目の作品には、少し泣かされました。こういう若者が東京にはたくさんいて、もしかしたら自分もちょっとそうだったかもしれなくて、その苦しみとか、焦りとか、渇きとかがリアルに蘇ってきて。 そしてそういう人たちに対する作者の愛情のようなもの、まなざし?にグッとくるような。甘やかすのではない、突き放すのでもない、ただ見守ってるような。やさしいパンクロックのような。 上昇気流をただただ待っている時代。
自分で作り上げてしまった自分の枠の狭さとか、自分をつらぬくことの本当の意味とか、変えられるのは他人ではなく自分だけだとか、いろんなことを思いました。
ちなみに。 ↓下の本の装丁は、リリーフランキー氏です。 カバーは透明でできてるので、カバーを外すとヒゲが消えるんだよ。
July 07, 2004
新宿二丁目の ほがらかな 人々 / リリーフランキー
ちょっとすごい表紙ですが(笑)。「新宿二丁目のほがらかな人々」という本。もともと「ほぼ日刊イトイ新聞」の企画「新宿二丁目のほがらかな人々」から始まったもののようです。 まー、見ての通り、新宿二丁目に生きる人々の話しなわけですけど、これ勉強になりますよ。ジェンダーを超えたとこに、大切なことがあるのねぇ、と思いました。
ほぼ日のサイトの中で、この本から抜粋したほがらかな「名言集」っていうのがあるんだけど、もう、このページを見て私は即注文しましたよ〜。グッときた、というヤツですね。今んとこ、全国の書店に並んでいるっていう状況ではないので、amazonあたりで手に入れるのがお手軽なようです。
ちなみに、名言集からひとつ。
盛り上がるときにはね、
幸せな恋人同士でいいんだけど、
なんか問題が起こったときには、
ぜったい人間同士としての問題を解決をしないと、
恋人同士の問題は解決できないの。
う〜ん、確かに。 ちなみに、ほぼ日を↓、私はほぼ毎日読んでいます。おもしろいよ。
July 07, 2004
水は答えを知っている / 江本勝
「水は答えを知っている」という本を読んで感動。綺麗な水の結晶が表紙で、前から気になっていたんだけどその時に限ってお金を持ってなかったり、他にもっと欲しい本が見つかってしまって買わなかったりしていた本で、やっと私のもとにやってきたという本。
人間の発する言葉や意識がどれだけまわりに影響を与えているかを、水の結晶を使って証明している。とりあえずびっくりしたのが、同じところから採取した水をコップにいれて、それぞれに「ばかやろう」という文字と、「愛、感謝」という文字を見せた後に、それぞれの結晶を観察すると、「ばかやろう」の文字を見せた水の結晶は形がばらばら。つまり結晶にならないのに対して、「愛、感謝」を見せた方は、そりゃぁ綺麗な繊細な、形の整った結晶を作ったというもの。もちろん日本語に限らず、他の国の同じ意味の言葉でも同じ様な差がでていた。 同じような条件で、かたやクラシックを聴かせ、かたやヘビメタを聴かせたり、とにかくいろいろな実験をしていて、その結果 を科学的に証明している。
本の中には実際の写真もいっぱい載ってるんだけど、ほんと、その差は歴然。びっくりする。 ちなみに、人間の成分の70%は水なので、当然、ネガティブな言葉を浴びせられた人間中の水の結晶は、バランバランになっているということ。 水には、人間(に限らないだろうけど)のそういう意識(波動)が転写 されているんだって。ちょっと怖い感じもするけど。しかも、水同士?は繋がっていて、湾岸戦争中に大規模な爆撃があった前後では、いつもなら綺麗な結晶を見せてくれる日本国内の天然水の結晶が見事にくずれたらしい。
とにかくそういう話しがたくさん載っている本なのです。この本は、日本よりも海外での反応が大きかったらしく、著者の方は世界中にこのことを伝えているようです。もともとは自費出版だったらしいけど。 すごいなぁ〜。この人の話し聞いてみたいなぁ。
ちなみに、国内の水道水は、塩素の影響で結晶にならないそう....。それと、ペットボトルで売られているいろんなミネラルウオーターも今イチ綺麗な結晶ではないんだって、なんで?と思ったら、水は流れている状態が本来の姿で、閉じ込めたり、流れが滞ってしまうと、どんどん澱んでいくんだそう。なるほど、だからキレイな川の水がすごくおいしいわけか。 ということは、人間の体内を流れる水(血液その他)も同じということで。
...と、とりとめもなくいろいろ考えてしまうけど。 とにかくこの本、おすすめ。ありがちな、無理矢理ポジティブシンキング!みたいな本とは別 格です。何も誇張せず、ただ淡々と、結晶が映し出す事実を伝えています。ちなみにこの本の第2弾も出ているみたいなので、さっそく読んでみる!
→(後日談)第二弾も読んでみた。こちらもおすすめ。
July 07, 2004
スティル・ライフ/池澤夏樹
第98回芥川賞&中央公論新人賞受賞作品
大好きな本です。
この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。きみは自分のそばに世界という立派な木があることを知っている。それを喜んでいる。世界の方はあまりきみのことを考えていないかもしれない。でも、外に立つ世界とは別 に、きみの中にも、一つの世界がある。きみは自分の内部の広大な薄明の世界を想像してみることができる。きみの意識は二つの世界の境界の上にいる。大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。たとえば、星を見るとかして。
二つの世界の呼応と調和がうまくいっていると、毎日を過すのはずっと楽になる。心の力をよけいなことに使う必要がなくなる。水の味がわかり、人を怒らせることが少なくなる。星を正しく見るのはむずかしいが、上手になればそれだけの効果 があがるだろう。星ではなく、せせらぎや、セミ時雨でもいいのだけれども。__本文より
これは冒頭の2頁の文章です。
「僕」と佐々井にまつわる出来事を描いた物語自体は、特に大きく盛り上がるわけではなく淡々と語られます。佐々井のちょっと他の人とは異なる言動や、次第に影響を受けていく「僕」の様子、その根底にはこの冒頭のエッセンスが間違い無くあります。それはもちろん池澤さんの基盤にあるものなのでしょう。
文中に雪が降るところの描写があるのですが、ここの美しい文章を読んだ時にものすごくゾクゾクしたのを覚えてます。まるで自分が「僕」になったかのような、気持ちの良い感覚でした。ラスト、えっという感じで飄々と終わります。読後感が爽やかで、サラリとした気持ちになれます。
池澤さんの文章は、とても透明感があり、理知的で、優しい。
「しなやか」という表現がぴったりくる。
とても好きな作家です。
あ、短い本なので読みやすいですよ。
July 07, 2004
見仏記/いとうせいこう・みうらじゅん
みうら氏は小学生の頃から、ノートに仏像のスクラップを作っていたというディープな(相当変わってるよな)人らしい。そのノートというのが、お寺の拝観チケットや写 真の脇に熱い感想文まで書かれてあるという熱の入りよう。そんなみうら氏がいとう氏を誘い、全国各地の仏像を見物しに行くという企画。基本的に仏像の前で悦に入るみうら氏をいとう氏が暖かく見守りつつ分析していくという流れなのだが、く、くだらない(笑)しかし、仏像にまつわるアレコレを当時の政治や、仏彫士・庶民の気持ちになって推理していく論客は説得力がある。もしかしたら下手な仏像解説本よりも本質に近いのかもしれない。何よりこの人たちってば仏像に対する愛情がありあり!(なんでそんなに仏像ラブなのかはわかんないけど。でも仏教とか思想には入っていかず、あくまでモノとしての仏像ラブみたい。愛情というか、フェチだな。)ちなみに寒河江の慈恩寺や立石寺(山寺)も登場します。
July 07, 2004
全日本顔ハメ紀行 "記念撮影パネルの傑作"88カ所めぐり / いぢちひろゆき
これまたくだらない本ですね〜(笑)
観光地なんかによくある、ベニヤ板に描かれた水戸黄門の顔の部分に穴が空いてて、そこから自分の顔を出して記念写 真撮るやつ(撮るか?)、あれを「顔ハメ」というそうです。そんな顔ハメの傑作を全国各地から選りすぐり紹介した一冊。いや〜、世の中には我々の想像を絶する発想の持ち主がいるようで、人の形をしているのはまだマトモで、いやいやそれ何の記念なのよ!てか、そもそもソコに穴空いてちゃダメ!なものまで抱腹絶倒の数々。
どんな顔ハメでも企画が通り、製作される訳で(芸術っていうより商用物でしょコレ)。こういう破天荒な顔ハメが製作されるとは、(センスはともかく)なんてアグレッシブなのかしら、と感心。そしてそれを設置する所って。。